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長崎県佐世保市のカイロプラクティック。整体。

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研究

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起立血圧試験を用いた
脊椎アジャストメントの自律神経系への影響


要 約
 今回の研究では、脊椎アジャストメントが及ぼす自律神経系への影響について、起立血圧試験を用いて検討した。まず、被験者30名に対し上部頚椎アジャストメント前の仰臥位と起立時の収縮期血圧差と、アジャストメント後の仰臥位と起立時の収縮期血圧差について比較した。その約2週間後にほぼ同一の被験者に対して上部頚椎の時と同様の方法で上部胸椎のアジャストメント前後の差を比較した。それぞれのアジャストメント前の被験者を正常グループ、下降グループ、上昇グループと分類したところ、下降グループが多数を占めた。この下降グループの結果に焦点を当てたところ、上部頚椎・胸椎共にアジャストメント前後に有意な差が認められ、収縮期血圧差が上昇傾向を示す事が明らかとなった。つまり、上部頚椎と上部胸椎のアジャストメントを行なうことで、圧受容器反射を正常な状態に戻し、同時に自律神経系にも影響を与えるということが明らかとなった。

キーワード:アジャストメント、自律神経系、起立血圧試験、起立性低血圧、圧受容器反射

緒 言
 現在日本はストレス社会と言われており、カイロプラクティックを受診する患者の中でもストレスによる様々な症状を訴えてくるケースが多い。主にそのストレスは精神的なもので、特に自律神経系が関わっていると考えられる。自律神経系の問題を訴える患者を診ていく中で、治療による自律神経への影響は臨床的に良く知られているが、その効果や検査法は確立されていない。ここで着目したのは、起立血圧試験(1,2)である。通常臥位や座位の状態から起立すると約300から800ccの血液が急激に足方へ下降し、一瞬血圧が低下する。その一瞬の血圧の低下は、頚動脈洞ならびに大動脈弓の圧受容器が感知し、その情報が前者は舌咽神経、後者は迷走神経へと伝わる。これが延髄の血管運動中枢を刺激して交感神経を優位な状態にし、末梢血管を収縮させて血圧を元の状態に戻す(1−9)。正常であれば、4〜8mmHg収縮期血圧が上昇する(3)。しかし、自律神経系に異常が起こると、この反射系が正常に働かず、起立性低血圧や起立性高血圧になってしまう。起立性低血圧に陥ると立ちくらみ、めまい、失神、視力低下、後頭部痛、肩こりなどの症状をきたし、起立性高血圧では脳血管障害の危険性がある(2)。主に、前者の方が起こりやすいと言われている。これらの様々な症状を改善させる目的で、上部頚椎と上部胸椎に対してアジャストメントを行なう事が有効であると考えられる。そこで著者は、上部頚椎へのアジャストメントによって迷走・舌咽神経に刺激を与え、また、上部胸椎へのアジャストメントによって心臓、大動脈弓の圧受容器に刺激を与えて(1,4,6)、起立血圧試験を行ない自律神経系の機能をモニターすることを試みた。
この研究は、カイロプラクティック治療による自律神経系への影響を臨床的研究から理論的に解釈する上で、また、日常でのカイロプラクティック臨床に役立たせる上で重要なものと考えられる。


方 法
 RMIT大学日本校在学中の学生から無作為に選択した男性23名、女性7名、計30名を被験者とした。
まず、被験者を5分間仰臥位とし、次に仰臥位時の血圧を測定した。その直後、起立させ血圧を測定し、再び仰臥位にさせ、上部頚椎(C0〜C2)に対してアジャストメントを行なった。アジャストメント後そのまま仰臥位で5分間安静にし、再度仰臥位と起立時の血圧を測定した。
上部頚椎をアジャストメントした約2週間後、ほぼ同一の被検者に対し、同様の方法で上部胸椎(T1〜3)のアジャストメントを行なった。
血圧測定には、自動血圧計(オムロンデジタル自動血圧計HEM−703Cと松下電工上腕血圧計EW3110)を用いた。また、アジャストメントの部位は動的触診(モーションパルペーション)で決定した。

結 果
1. 上部頚椎へのアジャストメントによる収縮期血圧への影響
 30人の上部頚椎へのアジャストメント前後の収縮期血圧の測定結果を表1−1に示した。アジャストメント前の仰臥位の収縮期血圧が115±14mmHg、起立時が113±13mmHgでその差は−2±9mmHgであった。それに対しアジャストメント後は、仰臥位の収縮期血圧が114±13mmHg、起立時が114±15mmHgでその差は0±8mmHgであった。アジャストメント前は仰臥位と起立時の収縮期血圧の差が−2mmHgで、アジャストメント後ではその差が0mmHgとなり上昇傾向を示しているがアジャストメント前後に大きな差は見られなかった。
 アジャストメント前の仰臥位と起立時の収縮期血圧の差から、正常グループ(差が0〜12mmHg)、下降グループ(差が−1mmHg以下)、上昇グループ(差が13mmHg以上)の3つのグループに分けたところ、正常グループが13人、下降グループが16人、上昇グループが1人となり下降グループが最も多かった。その下降グループについて表1−2に示した。下降グループでのアジャストメント前の仰臥位時の収縮期血圧が119±15mmHg、起立時が110±15mmHgでその差は−9±6mmHgであった。それに対しアジャストメント後は、仰臥位の収縮期血圧が117±14mmHg、起立時が116±17mmHgでその差は−1±9mmHgであった。下降グループでは、アジャストメント前の収縮期血圧の差が−9mmHgであったのに対し、アジャストメント後では−1mmHgと大きく上昇傾向を示した。

<表1−1> 上部頚椎(収縮期血圧) 30人全員の結果
アジャスト前
仰臥位 起立時
平均 115 113 -2
標準偏差 14 13 9

アジャスト後
仰臥位 起立時
平均 114 114 0
標準偏差 13 15 8
単位:mmHg

<表1−2> 上部頚椎(収縮期血圧)下降グループ 
アジャスト前
仰臥位 起立時
平均 119 110 -9
標準偏差 15 15 6

アジャスト後
仰臥位 起立時
平均 117 116 -1
標準偏差 14 17 9
単位:mmHg

2. 上部胸椎へのアジャストメントによる収縮期血圧への影響
 30人の上部胸椎へのアジャストメント前後の収縮期血圧の測定結果を表2−1に示した。アジャストメント前の仰臥位の収縮期血圧が114±10mmHg、起立時が113±15mmHgでその差は−1±10mmHgであった。それに対しアジャストメント後は、仰臥位の収縮期血圧が112±11mmHg、起立時が113±16mmHgでその差は1±10mmHgであった。アジャストメント前は仰臥位と起立時の収縮期血圧の差が−1mmHgで、アジャストメント後ではその差が1mmHgとなり上昇傾向を示しているがアジャストメント前後に大きな差は見られなかった。
 上部頚椎の時と同様に3つのグループに分けたところ、正常グループが8人、下降グループが20人、上昇グループが2人となり下降グループが最も多かった。その下降グループについて表2−2に示した。下降グループでのアジャストメント前の仰臥位時の収縮期血圧が114±12mmHg、起立時が108±13mmHgでその差は−6±5mmHgであった。それに対しアジャストメント後は、仰臥位の収縮期血圧が112±12mmHg、起立時が111±16mmHgでその差は−1±9mmHgであった。下降グループでは、アジャストメント前の収縮期血圧の差が−6mmHgであったのに対し、アジャストメント後では−1mmHgと上昇傾向を示した。 

<表2−1> 上部胸椎(収縮期血圧)
アジャスト前
仰臥位 起立時
平均 114 113 -1
標準偏差 10 15 10

アジャスト後
仰臥位 起立時
平均 112 113 1
標準偏差 11 16 10
単位:mmHg

<表2−2> 上部胸椎(収縮期血圧)下降グループ 
アジャスト前
仰臥位 起立時
平均 114 108 -6
標準偏差 12 13 5

アジャスト後
仰臥位 起立時
平均 112 111 -1
標準偏差 12 16 9
単位:mmHg

考 察
 上部頚椎・上部胸椎ともにグループ分けした中の下降グループのほとんどで、アジャストメントによって収縮期血圧差の上昇が見られた。上部頚椎ではアジャストメント前後で5%、上部胸椎では1%の危険率で有意差が見られた。つまり、上部頚椎と上部胸椎のアジャストメントは、起立性低血圧の改善と自律神経系の機能改善の要素があると解釈できる。そのメカニズムとして、上部頚椎のアジャストメントは、迷走・舌咽神経への刺激、上部胸椎では、心臓・大動脈弓の圧受容器への刺激が、血圧調節の反射系を正常にしたと考えられる。
 上部頚椎と上部胸椎のアジャストメントを比較したところ、上部頚椎のアジャストメントの方が若干上昇傾向を示しているが、その差はほとんどなかった。つまり、上部頚椎のアジャストメントによる迷走・舌咽神経への刺激と、上部胸椎のアジャストメントによる心臓・大動脈弓の圧受容器の刺激は、どちらも血圧反射を改善させるように働き、自律神経系へも影響していることが考えられる。
 今回の研究の結果から、今後のカイロプラクティックの臨床の中で役立つ要素の一つとなり得るという事と、患者のQOL(生活の質)の改善に貢献できるという事が証明でき、有意義な結果となった。
 今回は多数の被験者に対しての研究であったが、今後は自律神経系の症状を持つ少数の被験者に対しての継続的なアプローチによる研究によって、よりカイロプラクティックの効果を証明する必要がある。また、今回は起立血圧試験によって自律神経系を間接的にモニターしていったが、今後はその検査法をより直接的に行なうために、専用の機器を用いた研究を行なう必要がある。


謝 辞
 本研究を遂行するに当たり,本学専任講師の村上佳弘先生ならびに杉崎哲朗博士に終始御指導・御鞭撻を賜り心より感謝申し上げます。また、快く本研究にご協力をいただいた皆様に感謝いたします。


文献 
(1) 水野美邦、栗原照幸:標準神経病学,医学書院,2003.
(2) 後藤由夫、松尾裕、佐藤昭夫:自律神経の基礎と臨床,医薬ジャーナル社,1993.
(3) デービッドS・ウォルサー,栗原修訳:アプライドキネシオロジーシノプシス,科学新聞社,2000.
(4) 佐藤昭夫、佐藤優子、五嶋摩理:自律機能生理,金芳堂,1995.
(5) 佐藤昭夫、山口雄三:生理学,医歯薬出版,1991.
(6) 本郷利憲、鷹重力、豊田順一、熊田衛:標準生理学(第4版),医学書院,2000.
(7) Robert M Berne,Matthew N Levy,板東武彦、小山省三監訳:バーン・レヴィ 生理学(第3版),西村書店,1996.
(8) Arthur C Guyton,John E Hall,早川弘一監訳:ガイトン臨床生理学、医学書院,1999.
(9) 真島英信:生理学,金芳堂,1996.